目次
こんにちは!
「海外経験を活かして働こう!」ワーホリキャリア.com代表の平渡です。
「海外経験を活かしたキャリア形成」について、厚生労働省に貴重な調査結果があることをご存知でしょうか?
少し前になりますが一般社団法人海外留学協議会(JAOS)が厚生労働省から委託事業として行った
●「勤労青少年の国際交流を活用したキャリア形成支援事業(Global Ace)」を通じて「海外体験を活かしたキャリア形成事例」
というものを発表しています。
これらは「海外経験を活かしたキャリア」を考えるにあたりとても参考になりますので、今回皆様に紹介させて頂きたいと思います。
一般社団法人海外留学協議会(JAOS)とGlobal Ace事業について
まずはじめに「一般社団法人海外留学協議会(JAOS)」と「GlobalAce事業」について簡単にご紹介させて頂きます。
【一般社団法人海外留学協議会(JAOS)とは】
世界規模の留学事業者団体FELCAに、日本で唯一加盟している留学業界団体が一般社団法人海外留学協議会JAOSです。
JAOSは海外留学に関する情報提供、文科省との取り組み、会員団体の紹介等、日本人が安心できる留学環境の実現を目指しています。
※一般社団法人海外留学協議会(JAOS)
https://www.jaos.or.jp/
【 Global ACEとは 】
海外体験を生かしたキャリア形成を目指す皆さまを、渡航前から帰国後まで一貫してサポートするプログラムのことです。
プログラム名は「勤労青少年の国際交流を活用したキャリア形成支援事業」ですが、通称「Global ACE(Global Action forCareers and Employability)」と呼ばれており2013~2016年に一般社団法人海外留学協議会(JAOS)が厚生労働省から委託を受けてこの事業を行いました。
※勤労青少年の国際交流を活用したキャリア形成支援事業(厚生労働省委託事業)
https://judgit.net/projects/478
この「Global ACE」のサポート内容は下記の通りです。
1)渡航前
・対面コーチングを通じた能力開発計画の作成
・渡航動機や認識、自己分析
2)渡航中
・能力開発の進捗確認(月1回)
3)帰国後
・対面コーチングを通じた海外体験シートの作成
・集団形式による就職研修(教育・実践コーチング等)
※勤労青少年の国際交流を活用したキャリア形成支援事業(厚生労働省委託事業)
「海外体験を生かしたキャリア形成事例分析」(JAOS)
https://www.jaos.or.jp/trend-data
この内容がワーホリ・留学経験を活かしてキャリアアップを目指す皆様にとって参考になる点が多々あるため、今回は要点を抜粋して皆様に紹介させて頂きます。
Global ACE事業を行う背景と目的について
この分析レポートの冒頭には当支援事業を行う「背景」と「目的」が記されています。
少し長いのですが、非常に重要なポイントになるので是非チェックをしてみて下さい。
【事業を行う背景】※要点を抜粋
少子高齢化にともなう国内市場の縮小や、事業のボーダレス化の進展により、大手企業を中心にますますのグローバル化が進む中、中小企業などでも海外展開の必要性が高まってきている。
しかしながら特に中小企業では海外で事業展開を担える人材が不足しており、グローバル人材への求人ニーズは今後一層高まることは必須である。
その一方で、海外就業体験をした若年者の雇用状況は必ずしも良好であるとは言いにくく、平成16年度厚生労働省委託事業『海外就業体験が若年者の職業能力開発・キャリア形成への影響・効果に関する調査研究』の報告書(以下、「H16年度調査」)によると海外就業体験が就職活動に有利になったと答えた割合は40.9%程度であり、平成25年度に行った同様の調査研究(以下、「H25年度調査」)でも43.7%程度であった。
しかしながら、H16年度調査やH25年度調査でも明らかになっているが、海外就業体験者は、企業が若年者に求める能力をそれなりに習得したと自覚して帰国している。
つまり、海外で有意義な生活を過ごしてきた海外就業体験者は、企業でグローバル人材として十分活躍できる可能性を大いに秘めているともいえる。
そこで、厚生労働省では、海外体験を希望する意欲ある若年者が、そのエンプロイアビリティを高めるために現地での計画的な能力開発を行い、帰国後の就職活動ではその成果を十分表現し円滑な就職活動ができるような支援事業を立ち上げた。
その『平成25年度 勤労青少年の国際交流を活用したキャリア形成支援事業』(通称「Global ACE(GlobalAction for Careers and Employability)」)では、海外インターンシップやワーキング・ホリデー、語学研修、ボランティアなどの就労に係る海外体験のある若年者に対して、その経験を生かした就職を実現できるよう、キャリア・コンサルタントによる渡航前(中)から帰国後までの一貫したキャリア・コンサルティングを実施した。
【事例分析の目的】 ※要点を抜粋
当事例分析集では、Global ACEで実施されたキャリア・コンサルティングの事例を元に、企業が求める人材に必要とされる能力・資質を海外体験で習得するためにキャリア・コンサルタントがどう支援し、その結果どのような成果があったのかについて分析を試みた。
また渡航者の視点では、海外就業体験を有益なものとするために必要と思われるマインドや行動について考察した。
今後、ますますグローバル人材への求人ニーズが高まる一方で、海外体験を積む若年者も増えると思われ、
その中で海外体験を生かしたキャリア形成に有効な能力開発支援が一層求められてくる。当事例分析集の目的は、若年者を海外へ送り出す側や、帰国後に採用する側、キャリア・コンサルタント、そして渡航者などを対象に、グローバル人材育成や若年者の雇用創出を考える一助となることである。
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少し長いですがご理解頂けたでしょうか?
ポイントをまとめるとこのレポートでは
●多くの日本企業において、急速に進むグローバル化に対応できる「グローバル人材」の必要性は高まるばかりだが、この人材不足が大きな課題となっている。
●ワーキングホリデーや留学経験者は海外経験を通じてグローバル人材として活躍できる素地を備えている可能性が高いのだが、残念ながら企業の就労に繋がっていない現実がある。
●この課題を解決するために、専門家のサポートの元海外経験を計画的に行うことにより海外経験を積んだ若者にどのような効果があったかを検証する
ということを提唱しています。
非常に興味深い内容ですね!
企業が求める能力・資質について
ここから「海外経験を積んだ方がどのような能力を身につけたのか?」を詳しく見て行きたいのですが、その前に
●「企業が海外経験者に求める能力・資質とは具体的にどのようなものなのか?」
について確認をしたいと思います。
一般社団法人海外留学協議会(JAOS)の報告レポートでは
1.社会人基礎能力
2.産業界が求める人物像
3.海外就業体験を通じて習得した能力・資質
というカタチで定義をしていますので下記にその内容を紹介させて頂きます。
1 社会人基礎力
社会人基礎力とは、経済産業省が2006年から提唱している能力で、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」を柱に下記の12の能力要素から構成されており、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として定義されています。
【前に踏み出す力】~一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力~
①主体性:物事に進んで取り組む力
②働きかけ力:他人に働きかけ巻き込む力
③実行力:目的を設定し確実に行動する力
【考え抜く力】~疑問を持ち、考え抜く力~
④課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
⑤計画力:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
⑥創造力:新しい価値を生み出す力
【チームで働く力】~多様な人々とともに、目標に向けて協力する力~
⑦発信力:自分の意見を分かりやすく伝える力
⑧傾聴力:相手の意見を丁寧に聞く力
⑨柔軟性:意見の違いや立場の違いを理解する力
⑩状況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
⑪規律性:社会のルールや人との約束を守る力
⑫ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対応する力
2.産業界が求める人物像
競争が激しいグローバル時代の中で、企業が若年者に求める資質は、主体性や高いコミュニケーション能力、創造性、チャレンジ精神などが挙げられています。(データの出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構2011年調査、回答3392 社)
※独立行政法人 労働政策研究・研修機構
https://www.jil.go.jp/
【企業が若手社員の採用にあたり、最も求めている能力】
●指示されたことだけでなく、自ら考え行動することができる(78.0%)
●コミュニケーション能力が高いこと(65.7%)
【従来と比べて必要性が大きく増している能力・人材】
●自社にない新しい発想を持った人材
●チャレンジ精神があること
●柔軟な発想ができること
●語学力があること
「失敗や困難があってもやり遂げようとする意志が強い」と感じる世代の割合】
・40代以上:62.4%
・30代:36.0%
・20代:8.8%
※企業では若い世代ほど失敗や困難への耐性が極端に弱くなっていると感じている。
3.海外就業体験を通じて習得した能力・資質
海外経験を通じて修得した知識・技術については下記の通りです。(有効回答数1538件)
●国際感覚・異文化適応能力
80.1%(ワーキングホリデー)/89.9%(インターンシップ)
●積極性
80.7%(ワーキングホリデー)/86.8%(インターンシップ)
●幅広い視野
77.5%(ワーキングホリデー)/86.5%(インターンシップ)
●コミュニケーション能力
79.2%(ワーキングホリデー)/85.0%(インターンシップ)
●忍耐力・我慢強さ
71.7%(ワーキングホリデー)/83.5%(インターンシップ)
●外国語能力
55.7%(ワーキングホリデー)/75.5%(インターンシップ)
●判断力・決断力
60.5%(ワーキングホリデー)/70.3%(インターンシップ)
海外就業体験を通じて習得できる能力・資質とは?
ここまでお伝えさせて頂いた「社会人基礎力」や「産業界が求める人材像、海外就業体験で習得できる能力」を踏まえ、次は「海外就業体験を通じて習得できる11つの能力・資質」についてご紹介させて頂きます。
①主体性(ビジョン策定)
● 自分が何のために渡航するのか?の目的が明確化できている。
● 海外就労体験でどのような力をつけたいのか?が明確化できている。
● 3年後の自分の理想とする働き方をイメージできる。
②語学力
● 外国語で日常会話ができる。
●外国語の新聞、広告、パンフレット、カタログなどから必要な情報を見つけることができる。
●外国語で感謝や謝罪の気持ちを表した手紙を書くことができる。
③異文化適応力
●異文化に興味を持ち、溶け込むことができる。
●自分とは異なる意見を持つ人を柔軟に受け入れることができる。
●異なる文化の習慣、思考方法の違いなどを認めあうことができる。
④論理的思考力
●発言の筋道を立てて話をすることができる。
●相手の意見を要約して、自分の言葉で言い換えることができる。
●事実やデータに基づいて物事を考え、表現することができる。
⑤ストレス対応力
●ストレスを感じることがあっても、ポジティブにとらえて対応できる。
●自分の感情をコントロールできる。
●ストレスを感じることがあっても、誰かに助けてもらいながら努力して乗り越えることができる。
⑥質問力
●相手が話していることについて、質問しながら意見を引き出すことができる。
●相手の立場や状況を考えて質問することができる。
●適切な質問によって、自分が知りたい情報を引き出すことができる。
⑦提案力(創意工夫する力)
●日々の業務の中から問題を発見し、新しい解決方法を提案することができる。
● 業務の中での課題を、周囲を巻き込みながら解決することができる。
●業務や事業に関する建設的な提案をすることができる。
⑧コミュニケーション力
●自分の意見を的確に伝えることができる。
●相手の意見を丁寧に聞いて意思の疎通ができる。
●場面に応じて適切に伝達手段(口頭・Eメール・SNS・電話)を活用することができる。
⑨実行力(チャレンジする力)
●物事に粘り強く取り組むことができる。
●目的の達成に向かって、失敗を恐れずにチャレンジすることができる。
●自ら目標を設定して、計画的にやり遂げることができる。
⑩キャリ形性意識
●自分の長所やこれまでの成長を理解し、職業生活に生かそうと考えている。
●自分の能力を発揮するステージとして職業をとらえ、プロになるという意識を持っている。
●志望企業・業界に就職するために必要な知識、スキル、資格を把握している。
⑪就職のための自己表現力
●志望企業、業界に応じた応募書類(ジョブカード、職務経歴書、履歴書、自己アピール書)を作成できる。
●志望企業・業界を意識して、うまく志望理由を表現できる。
●面接の基本的なマナーを理解できている。
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「GlobalACE」では上記の11の能力を海外渡航前、渡航中、帰国後の就職時の下記のように3つのステージに分けて分類しています。
①=渡航前に必要とされる能力・資質(海外就業体験を有効にするためのマインド)
②~⑨=渡航中に習得が期待される能力・資質(渡航中の行動習慣で習得できるスキル)
⑩、⑪=帰国後に必要とされる能力・資質(就職活動に必要なマインドとスキル)
要するに
と定義できます。
シンプルですが非常に分かりやすく言語化されているため、参考になるのではないでしょうか。
海外渡航中に伸ばせる8つの能力
前回記載の通りGlobalACEでは海外渡航中に伸ばすことが出来る能力を8つ定義しています。(②~⑨)
この8つの能力のうち海外就業経験者が「特に強化したい能力」とは何でしょうか?
また実際に海外就労経験を通じて「実際にどの能力を向上することが出来たのか?」についての報告レポートがあるので、下記にその紹介させて頂きます。
●強化能力の選択割合
海外渡航者に概ね3つ程度の「海外就業経験を通じて習得したい能力」を選択してもらったところ、「語学力」が全体の70%以上を占め、その他は「質問力」を除くとどの項目も約3割程度の方が「強化したい能力である」と回答しています。
<海外就業経験を通じて習得したい能力>
①語学力 73.7%
②異文化適応能力 31.6%
③論理的思考力 28.9%
④ストレス適応力 28.9%
⑤質問力 10.5%
⑥提案力(創意工夫する能力)34.2%
⑦コミュニケーション力 36.8%
⑧実行力(チャレンジする力)31.6%
●習得出来た能力はどのようなものか?
それでは実際に習得(向上)できた能力はどのようになっているのでしょうか?
上記8つの能力についてそのレベルを5段階(1=ほとんどできてない 2=20~30%程度出来る 3=50%程度出来る 4=70~80%程度出来る 5=ほとんど出来る)で自己評価をしてもらった結果判明した、海外渡航前と渡航後の能力の向上率を下記に紹介させて頂きます。
<実際に習得出来た能力>
①語学力 1.4ポイント向上(海外渡航前2.7→海外渡航後4.1)
②異文化適応力 0・9ポイント向上(3.5→4.4)
③論理的思考力 0.7ポイント向上(3.2→3.9)
④ストレス対応力 0.8ポイント向上(3.4→4.2)
⑤質問力 0.6ポイント向上(3.4→4.0)
⑥提案力(創意工夫する力) 0.7ポイント向上(3.0→3.7)
⑦コミュニケーション力 0.7ポイント向上(3.4→4.1)
⑧実行力(チャレンジする能力)0.5ポイント向上(3.7→4.2)
8つの各々項目に対して上記のような結果になりました。
ここから読み取れることは海外就業経験を通じて
●「語学力」が最も向上する(1.4ポイント)
●次に向上するのが「異文化適応力」(0.9ポイント)、「ストレス対応力」(0.8ポイント)と続いている
●全体平均で0.8ポイント(3.3→4.1ポイント)の能力が向上する
という結果が出ており、
ということを証明してくれていることになります。
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如何でしたでしょうか?
海外就業経験が帰国後のキャリアアップに有効であるというデータが少ない中、今回のこのレポートは大変価値あるものだと考えています。
是非この調査結果を参考にしてワーキングホリデーや海外留学経験を上手に活用することにより、キャリアアップに繋げると共に企業にしっかりPRして帰国後の就職を成功に導いて下さい!
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著者 / プロフィール
- 株式会社Jスタイルズ 代表取締役
- ワーホリキャリア.com 代表
- 渡邉美樹実践経営塾 塾頭
- 明治大学起業家紫紺会 会長
- iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教授
「海外経験を活かして働こう!」をコンセプトにしたワーホリ・留学経験者に対するキャリアサポート事業「ワーホリキャリア.com」を運営しています!